・学部や学科の選び方,決め方
・学部を選ぶ際に重視すべきこと
現役大学教員(私立大学,経済学部)
学生と接する中で伝えたいたくさんのことをブログ(サードゼミブログ)で発信中。
高校生の頃に将来の目標は決まっておらず,経済学部を選んだのは「潰しがきくから」という消極的な理由。
まだ将来の夢とか目標がはっきりしていないからどの学部を受けるか悩んでて…
学部はどうやって選んだらいいんだろう?🤔
どの学部に入るか?
それは,大学4年間で取り組む内容に思いっきり関係するだけではなく,卒業後の人生にもずっと影響しそうな「大問題」に思えます。
だからこそ,どの学部に入るか(≒目指すか,受験するか)は,受験生にとってはかなり重要な選択になっていると思います。
私自身も受験生の頃はそのように思っていました。
この記事では,どのような点を重視して学部を選んだらよいか,その選び方について私なりの考えを伝えていければと思います。
この記事では,学部の選択はそこまで深刻に考えなくてよいということを伝えていきます。
これは,私自身が大学~大学院に在籍していた経験だけでなく,実際に大学教員として学生(時にはオープンキャンパスに来る高校生など)を見ていて思うことなどに基づいて書いています。
ぜひ最後まで読んでみてください。
いくつか注意点がありますので先にお伝えしておきます,
まず,記事では主に学部の選び方についてお伝えしていきます。
学科の違いは学部の違いほどの差がありません。
というか,ほとんど差はありません。
そして,この記事は4年制大学に限定したものです。
短大や専門学校のことについては私自身詳しくないので,すみませんがご了承ください。
次に,この記事は既に将来の目標が決まっていて,進学先もそれに対応して決まっているという人ではなく,まだ具体的な目標が決まっていないという人に向けて書いたものですので,その点ご注意ください。
1.学部,学科は基本的に「どこでも大丈夫」
最初に結論をお伝えしますが,現時点で「これ」という学部や将来の目標等が決まっていないなら,
学部は(学科も)何でもいい。
ということです。
誤解を恐れずに言えば,
学部の違いは大した問題じゃない。
とも言えます。
とにかく,気にしすぎないようにした方がいいです。
真剣に悩んでいる人からは,
ふざけてるのか!
こっちは真剣に!
と言われそうですが,本当にこう思っています。
その理由をこの後説明してきます。
1-1.理由①大事なのは専門知識より自分の頭で考える力
「大学で身につけるべき力は何か?」と聞かれたら何と答えるでしょうか。
おそらく,「専門的な知識や能力」と答える人が多いのではないかと思います。
経済学部であれば経済理論や金融,会計などに関する専門的な知識を身につけるために勉強をすると考える人が多いでしょう。
もちろんこれ自体は間違ってはいないのですが,大学で身につける力の中で専門知識よりももっと大事なものがあります。
それは,
- 物事を論理的,理論的,批判的に考えることができる力。
- それらを使って未知の問題(答えの定まっていない問題)に取り組む力,解決する力。
です。
こちらの記事(大学の授業は高校までの需要後どう違う?違い5選を紹介(講義形式編))でも紹介したように,大学では高校までと違って「意見が対立しているもの」であったり,「そもそも正解がないもの」を扱うことが多いです。
世の中の多くの問題は「正解が分かっていない」からこそ問題になっているわけで,そういうものの方が多いです。
これらの問題に対して「分かりませーん」,「習ってないので知りませーん」と言っていては何もできない人になってしまいます。
自分で身に付けた知識などを使って,これらの問題に取り組んで,その解決を目指す力が大事です。
そして,これらの力は「学部を超えて」身につけるもの,あるいは,「どの学部でも共通して身につけるべきもの」です。
学部選びはこの一番大切な力を身につけられるかどうかには関係ないわけですね。
1-2.理由②専門の違いは「具体例の違い」に過ぎない
大学で身につけるべき力で一番大切なものは,学部を超えて身につけるものであると伝えました。
言い換えれば,身につける力の最終目標は学部によって大きくは変わらないということです。
じゃあ,学部の違いはどういうところになるの?
その力を身につけるための「具体例」が違うってことだね。
たとえば,経済学部では経済系の「例」を使いながら,自分で考える力を身に付けますが,法学部では法律系の「例」を使いながらこの力を身につけていくことになります。
良い例かどうか分かりませんが,「頭を柔らかくする」という目標があったとして,そのために取り組むのは「脳トレ」でも「クイズ」でも「ディベート」でもなんでもいいですよね。
要するに,学部で学ぶ「専門知識の違い」というのは「アプローチの違い」なんです。
登山のルート(専門知識)が違うだけで,目標地点は同じ山頂(自分で考える力)というわけです。
そして,社会に出ると,異なるアプローチをする人たち(異なる学部,同じ学部でも異なる科目を履修してきた人たち)が協力し合って,問題に取り組んでいくことで新しい方法を見出していけるわけです。
1-3.理由③資格試験の講座等は,学部に関係なく開かれているものが多い
ここまで読んでいただいた方の中には,
そうは言っても,やっぱり学部の差ってあるんじゃないの?
と思うでしょう。
たとえば,在学中に銀行に就職したいと考えるようになったとして,文学部と経済学部でどちらが有利だろうかと言えば,経済学部のような気がします。
もちろん,学部の差が全くないとまでは言いませんが,大した差ではありません。
これは資格についても同じです。
学生が目指す代表的なものに「公務員」がありますが,卒業後の就職先の実績として公務員が多いのは法学部や経済学部ではないかと思います。
でもこれは,文学部だと公務員になれないとか,そういうことを意味するものではありません。
公務員ガイダンス等は学部に関係なく参加できますし,公務員試験の勉強は大学外で自主的に行うものです。
実際,私の高校の同級生には理系の学部から公務員になった友達もたくさんいます。
司法試験の制度が変わる前の話ではありますが,経済学部から弁護士になった人,理学部から弁護士になった人ですら実際にいます。
大切なことは,「この学部に行ったらこれになれない」とか「この学部に行ったらこの系統に進まないといけない」と,勝手に決めつけないことです。
大学に進学してからやりたいことが見つかって,それが自分の学部とは全然違う方向のものだったなんてことは普通にあります。
学部に変なこだわりや偏見を持たなければ,その時に,「今からでもやってみるか」と思えるかもしれませんね。
1-4.参考 学科はさらに違いが少ないので,全然気にしなくてOK
学科間の違いは学部間の違いよりも圧倒的に小さいです。
講義科目も共通項目(どの学科でも受講できる)ものが多い(というか,ほとんど)です。
履修できる科目はほとんど同じですし,担当教員も同じことが多いです(専任教員の場合)。
卒業のために修得しなければならない「群要件」や「必修科目の要件」が違ったりするくらいの差しかないことがほとんどです。
ですから,学科の違いはもう全然気にしなくて大丈夫です。
ちなみにですが,今では「経済学部」と「経営学部」は別の学部になっているところが多いですが,昔(正確には分からないですが,20~30年くらい前までが多かったイメージです)は「経済学部の中に経営学科が設置されていた」大学も結構ありました。
今でこそ,経済学部と経営学部は別学部になっているところが多くて,「全く別の学部」という印象が強いですが,元々同じ学部の中のカリキュラムに入っていたと考えると,「意外と学部の違いって大きくないのかも?」と思ってもらえるかもしれません。
2.少しでも興味がある分野の学部を選ぶ
学部の差はそれほど気にしなくていいってことは分かったけど,それならどうやって学部を選んだらいいの?
他の学部よりも,少しでも自分の興味がある学部にすればいいよ。
大学で身につけようとする力が同じであれば,あとは「どの具体例で練習したいか」を考えれば良いわけです。
自分が全く興味のないものでこれをやるのは,ハッキリ言って苦行しかありません。
たとえば,スタミナをつけようと思って有酸素運動をするとしましょう。
自分がアウトドア派で景色を見たりするのが好きなのに,「家の中でずっとエアロロード漕いでなさい!」と言われたらどうですか?
それなら,外にジョギングに行くとか,自転車で外を走った方がモチベーションが上がりますよね。
インドア派の人は逆になるかもしれません。
いずれにしても,目標が同じでもその手段はたくさんあって,人によって合う/合わないがあるので,自分に合う方法にするのが良いです。
同じ力を身につけるなら,少しでも「楽しんで身に付けられる」方がいいですよね。
つまらないとなかなかモチベーションが上がりません。
これは,高校までの勉強で味わってきた人も多いでしょう。
私もそうでした。
正直言って勉強は楽しくなかったです。
大学に入ってからの勉強の方がずっと楽しかったですね。
ちなみに,私の知り合いは小学校に入る前からずっと勉強が楽しかったと言っていました。
羨ましい…
話が逸れてしまいましたが,結局のところ,具体例として自分が少しでも他のものより興味がありそうだというものを選べばいいんです。
例えば私の場合は,法律とかよりもお金のことの方が興味がありました。
(こんなことを言っていますが,第1志望は法学部でした(笑)
それは法学部にこだわりがあったわけではなくて,学部名がカッコよかったのと,国際系の学部でちょっと面白そうだなと思ったからでした。
当時は英語がちょっとだけ得意だったという事情もありました(今は英語ダメダメです…(笑)))
私の出身地は地方の田舎だったので,
この田舎でみんなどんな仕事して生活してるんだ?
どんな仕事があるんだ?なくね?無理じゃね?
と,漠然とではありますがずっと疑問を持っていたこともあって,経済学部がメインターゲットになりました。
褒められたものではありませんが,私の「この程度の理由」でも,その後この判断を後悔したことはありません。
ちょっとした補足情報ですが,経済学部の教員,つまり,経済学関連の研究者になった人たちに聞くと,
潰しがきくから!
という理由で経済学部への進学を決めたという人が結構います。
私も,
将来のことは決まってないけど,公務員にしろ民間にしろ,経済学部なら選択肢が多く残るだろう。
と考えていました。
先ほど書いたように,「他の事よりは関心があった」というのもありましたし,「定員が多いから合格しやすいんじゃね?」なんて浅はかな考えもありました。
ただ,もし難易度が低かったとしても,自分が全く興味のない学部などは受けませんでした(あくまでも私の場合ですが,文学部とかは本当に関心がなかったです。)
実際に「やることは決まっていないけど何となく役立ちそうだから」といった消極的な理由で経済学部を選んでいる学生もいます。
(体感ですが,経済学部は他の学部より多い気がしています。)
でも,私はそれでいいと思っています。
よく高校では,
やりたいことが決まっていないのに大学に行くなんて…
なんて言われたりしますよね。
私も聞いたことがあります。
そりゃもちろん,決まっているならその方がいいとは思いますが,,,
高校生の段階で決まっていないと,というのはちょっと厳しいんじゃないかなと思います。
甘えなのかもしれませんが。
それこそ,理由は「大卒の平均生涯賃金の方が高卒よりもずっと高いので,とりあえず大学に行きます。」みたいなものでも十分に立派な理由だと思います。
大学に行ってからやりたいことを見つけていく学生もたくさんいます。
(大学卒業時点でも迷いまくっている学生も一定数いますけど…)
ですから,あまり心配せずに,大学の間に見つけよう!くらいの気持ちで進学していいと思います。
こんなことを書くと色んなところから怒られそうですが(笑)
もちろん,お金の問題もありますから無責任には勧められませんが,環境が許すならばやりたいようにするのが良いと思います。
まとめ
以上,大学の学部の選び方について個人的な意見をお伝えしてきました。
簡単にまとめておきます。
- 学部は気にしすぎない,どこを選んでも大丈夫。
・目標は学部が違っても同じ。
・専門の違いは具体例の違いでしかない。
・多くの進路はどの学部からでも目指せる。 - 少しでも他学部より興味のある学部を選べばいい。
学部や学科の選択は,その後の人生に大きく影響するのは事実ですが,その学部に進んだからと言って自動的に将来が決まるわけではありません。
受験生の皆さんには,ぜひ「もっと気楽に考えて欲しい」と思います。
それでは最後まで読んでいただきありがとうございました。
その他,適宜追加します。