卒論を書き始めるんだけど,論文とレポートの違いがよく分からない…🤔
卒論を書くかどうか悩んでいるんだけど,そもそも論文ってどういうものなの?🤔
論文や卒業論文という言葉は聞いたことがあっても,具体的にどういうものかはイメージしづらいかもしれません。
この記事では,
- 論文ってどういうもの?
- レポートってどういうもの?
- 論文とレポートの違いはどういうところ?
について解説していきます。
論文とレポートの区分は,必ずしも白黒はっきりと付けられるものでもなかったりします。
ただ,自分で論文も書きますし,学生の論文指導やレポートの課題等を見ることもある現役大学教員の立場から解説していきます。
この記事を読んでもらえれば,「論文がどういうものか(論文であることの要件は何か)」,「論文とレポートの違い」について知ってもらうことができます。
5分ほどで読めますので,ぜひ最後まで読んでみて下さい👍
1.論文とは何か?
最初に辞書にある「論文」の定義を確認しておきましょう。
論文とは
①議論する文。筋道を立てて述べた文。
出所:「デジタル大辞泉」
②学術的な研究の結果などを述べた文章。
大学生が書くことになる「卒論」などは「②学術的な研究の結果などを述べた文章」ですね。
ただ,これだけだとちょっと曖昧です。
というわけで,その中にある「学術的な研究」について調べてみます。
文部科学省HPに次のような記述があります。
学術,学術研究とは
学術は、「研究者の知的探究心や自由な発想に基づき自主的・自律的に展開される知的創造活動(学術研究)とその所産としての知識・方法の体系」であり、人類の知的探求心を満たすとともに、それ自体が知的・文化的価値を有するものである。
出所:厚生労働省HP「学術研究の特性と学術を巡る状況の変化」
ものすごくざっくりと言えば,学術研究とは,
- 自分の関心のあることについて(=知的探求心,自主的・自律的),
- 新しい発見をすること(=知的創造活動)
ということになります。
もうひとつ大事なことは,「論理的に導かれるものでなければならない」ことです。
要するに,「何となく」とか「好きだから/嫌いだから」といった「感情論」だけで書いたものは全く話にならない,ということです。
2.レポートとは何か?
次にレポートの定義を確認してみます。
レポートとは
①調査・研究などの報告書。
出所:「デジタル大辞泉」
②新聞・放送などで、現地に取材して、状況や実情を報告すること。また、その報告。
えっと,,,正直論文との違いが分からないんだけど…😥
そうだよね。
論文との違いは後で詳しく見ていくので,とりあえずレポートについて見ていこう。
一般的な意味としては,「レポート=報告書」ですが,大学でいう「レポート」は少し違うと思います。
大学でのレポートは,
「与えられたテーマについて,調べ,整理し,考察をし,それらを論理的な文章にまとめたもの」
といった感じです。
もう少し詳しく解説していきます。
大学でのレポートのポイントにはこのような⬇特徴があります。
- 大学の講義で課されることが多い。
- 何らかのテーマについて,資料を整理したり,まとめたり,若干のコメントや感想などを追加する。
- テーマはその講義で扱った内容に関することが多い。
- テーマはその講義の担当教員が指定する場合が多い。
さらに,大学で課されるレポートにはいくつかのパターンがあるように思います。
- 講義の復習・まとめ型
- 講義の内容の応用・演習型
- 与えられた(あるいは自分で設定したテーマ)についての調査・まとめ・考察型
これは,言ってしまえば「ただの復習」です(笑)
たとえば,「供給曲線を導く手順を説明する」みたいなイメージです。
講義で説明された内容を「整理して自分の言葉で説明する」という感じです。
これは講義の内容が理解できていれば比較的簡単ですが,勉強方法としてとても良いものです。
これは,講義で扱った基本の内容を理解していれば解ける,論理的に導ける内容について,その過程をまとめたり,データで確認して考察を書くといったパターンです。
たとえば,講義では2000年のデータを使って解説をしたけれども,2020年のデータと2050年の予測値を使うとどうなるかを調べてまとめるといったものが考えられます。
また,講義では単純化したモデルケースで説明したものを,実際のデータを使って計算してみる,といったものもあるでしょうか。
これはたとえば,「〇〇の問題点を複数挙げ,それぞれに対して考えられる対策について説明しなさい」といった感じです。
こうした課題は,ひとつの講義の総まとめ的な課題として提出されることが多いでしょう。
また,科目によっては,「講義で修得した手法を使って,自由なテーマで調べてみたください」といったものもあります。
このパターンは,比較的小人数の実習系科目に多いですね。
大学のレポート課題に共通するのは,その講義の内容をしっかり理解していれば,大きな問題なく書けるということです。
教員の立場から言えば,
どのような回答が出てくるかがある程度想定できるよ。
というものです。
レポートは,既にレールが敷かれているイメージです。
3.論文とレポートの違いとは?
論文とレポートの一番の違いはどこなの?🤔
一番の違いは,「新しい発見」や「独自性」があるかどうかだね。
これがあれば「論文」と言えるよ。
ということで結論から書きましたが,論文とレポートの決定的な違いは「新しい発見」や「独自性」があるかどうかです。
レポートというのは,言ってしまえば「調べてまとめました」です。
たとえば,
「人口減少が問題になっています。人口減少の主な要因の1つに少子化がありますが,少子化をもたらすものとして,◯◯,□□,△△,・・・などがあります。これらの問題を解決していくことが大事です。」
これはすでに指摘されているものを「調べてまとめました」という文章です。
まとめ方や視点などに個性が出るかもしれませんが,内容自体は「調べてまとめたこと」です。
ほかにも,
「学生生活の悩みについて大学生にアンケートを実施しました。その結果は◯◯となっています。・・・」
といったものも,自分でアンケートを実施したことには独自性がありますが,その結果を「まとめただけ」ではやはりレポートに分類されることになるでしょう。
論文の場合には,新しい発見や独自性が必要です。
要するに,「まだ誰もやっていないことをやる」とか,「調べても答えが出てこないことに,自分なりに答えを出す」とか,「世間で正しいとされていることが本当は間違っている」とか,こういうことを「論理的に」書いたものが論文になります。
たとえば先ほどの例で言えば,
「少子化の要因はいくつも挙げられているが,どの要因がどの程度影響していて,最も大きい要因が何かを定量的に明らかにしました。具体的には・・・」
とか,
「学生にアルバイトについてのアンケートを実施し,学生がアルバイトの選択においてどのような意思決定を行っているかを説明するモデルを考えました。具体的には・・・」
とか,こういった感じです。
(※あくまで例で出したものなので,これらの問いへの結論は書けませんが😅)
論文と言えるかレポートかを簡単に見分ける方法はないの?
ざっくりとした基準だけど,「インターネットで調べてみてすぐにそれっぽい答えが見つかりそうなものはレポートどまり,そうでないものは論文になり得る」と考えると分かりやすいね。
一般的に,論文ではテーマは自分で設定し,レポートではテーマが与えられる,と言われることが多いです。
たしかにそういうことが多いのですが,それは「運営上」そうなっているだけです。
人に与えられたテーマだと論文にはならないのか,と言えばそんなことはありません。
実際,学生によっては論文のテーマを与えるという方針を採っている教員もいます。
また,指導教員の専門や,設備(理工系の実験設備など)の関係である程度指定されることもあります。
テーマだけで判断することはできません。
これも一般的に,論文の文字数の方がレポートの文字数よりも多いと考えられています。
ただ,これも運営上の問題であって,ひとつの講義で出されるレポートの課題と,ゼミで1年かけて取り組む卒論とでは,掛けられる時間に明らかな差があります。
要求する水準も違います。
ですから,「結果的にそうなることが多い」だけであって,「文字数が少なければ論文じゃない」とか,「3万文字書いたからレポートじゃなくて論文だ」ということにはなりません。
どれだけのボリュームの文章を書いても,「調べてまとめた」ものであればレポートですね。
まとめ
論文とレポートの違いについて説明してきました。
論文とレポートの線引きは,機械的にビシッ!とできるものではありません。
ここで説明してきた基準は私の個人的な見解ですが,卒論で困っている学生にとっては役に立つ記事になったのではないかと思います。
記事の内容を簡単にまとめておきましょう。
- レポートは「調べてまとめた」もの。
- 論文には「新しい発見」や「独自性」がある。
- 論文とレポートの違いは,この「新しい発見」や「独自性」があるかどうかにある。
正直,修士論文として提出されている論文でも,
これ,学生のレポートやん…
なんて思うこともあります。
せっかく卒論を書くなら,しっかりとした「論文」を書けるように意識してみてください。
良い思い出になります👍
それでは最後まで読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m
適宜追加していきます。