大学の授業って高校までの授業と違って戸惑っちゃう…
科目によっても違うし,これが大学の授業では普通なの?
こんな風に感じている人も多いと思います。
この記事では,こんな疑問に答えていきます。
大学進学を考えている高校生にも参考になりますよ。
この記事では,「講義形式」の大学の授業について,高校の授業との主な違いを5つ紹介します。
(ゼミなどの「演習形式」については別記事にします。)
- 教科書の違い(教科書がないことも!?)
- 授業(講義)の方法の違い(板書がゼロのことも!?)
- 授業(講義)の内容の違い(結局答えが分からないことも!?)
- 授業の時間(長さ)(長い!?)
- 座席の指定の違い(どこでもいいの?)
この記事は,ふだん大学で学生と接する中で感じることなどを,大学教員の立場で率直に書いています。
※教員によってやり方や考え方は違うので,一教員の意見として読んでいただければと思います。
高校までの授業と大学の授業(講義)の違いを知ることで,戸惑わずに授業(講義)を受けられるようになります。
まだまだ大学の授業に慣れていない,という人はぜひ最後まで読んでみてください。
1.大学では教科書が指定されないこともある
高校の授業と大学の講義の違いの1つ目は「教科書」です。
高校までは,文部科学省の「教科書検定」に合格した教科書を使用することになっています。
文科省が「この内容でいいですよ」と言った教科書を使うことになっています。
1.教科書検定の意義
「我が国では、学校教育法により、小・中・高等学校等の教科書について教科書検定制度が採用されている。教科書の検定とは、民間で著作・編集された図書について、文部科学大臣が教科書として適切か否かを審査し、これに合格したものを教科書として使用することを認めることである。
教科書に対する国の関与の在り方は、国によって様々であるが、教科書検定制度は、教科書の著作・編集を民間に委ねることにより、著作者の創意工夫に期待するとともに、検定を行うことにより、適切な教科書を確保することをねらいとして設けられているものである。」
2.教科書検定の必要性
「小・中・高等学校の学校教育においては、国民の教育を受ける権利を実質的に保障するため、全国的な教育水準の維持向上、教育の機会均等の保障、適正な教育内容の維持、教育の中立性の確保などが要請されている。文部科学省においては、このような要請にこたえるため、小・中・高等学校等の教育課程の基準として学習指導要領を定めるとともに、教科の主たる教材として重要な役割を果たしている教科書について検定を実施している。」
出所:文部科学省HP「教科書検定制度について」
(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/003/gijiroku/08052214/001.htm)
高校までは「決まった教科書があるのが当たり前」という状態でしたよね。
高校と大学の教科書の違いには,大きく分けて3つのパターンがあります。
順番に見ていきます。
1-1.教科書がない
大学の授業では「教科書なし」という科目が結構多いです。
「教科書なし」は以前から普通にありますが,最近は増えてきていると思います。
教科書が無くてどうやって授業をするの?
という話ですが,多くの場合は「スライド資料」や「レジュメ」を配布することになります。
※スライド資料=パワーポイントのスライドのことです。
※レジュメ=授業の内容の要点をまとめたメモや補助資料のようなものです。
学生としては,教科書を買わなくてよいのでお金は掛からずに済みます。
スライド資料やレジュメも,最近ではWeb上にアップロードされていることが多くなっているので,入手も簡単ですね。
1-2.教科書はあるけどあまり使わない
はい,これ,学生にとっては「一番嫌なパターン」です😞
教科書指定されてるからお金出して買ったのに,ほとんど使わないじゃん!!👿
というパターンがあります…
「教科書をどのくらい使うか」は,「教科書メイン,補助で資料」という感じから「資料メインで,教科書はたまに」という感じまで教員によってバラバラです。
教科書を買ったのにほとんど使わない…というのは学生にとってはかなりの不満のはずです。
「買う必要なかった!」という不満も度々聞きます。
こうなると,
教科書は買った方がいいの?
という質問が出てくると思いますが,これについてはいずれ別記事でお伝えしようと思います。
1-3.教科書のバリエーションの多さ
高校までの教科書は,文科省の検定を合格した少数の中から選んだものを使っていました。
ですから,北海道の高校生と沖縄の高校生が同じ教科書で勉強している,というのは普通のことです。
ところが,大学では基本的に,「教員が自由に指定する」形になります。
もちろん,検定もありません。
教員が使いやすいと思う本,教員の考えに近い本,教員自身が書いた本,などなど本当に色々な本が指定されています。
同じ大学の似た科目で,担当者が違うので教科書も違う,なんてことも普通です(笑)
もちろん,「全国的に教科書としてよく使われている本」もあったりしますが,基本はバラバラです。
中には「それを教科書にするのってどうなの?」なんてものもあったりしますが,この「バリエーション」というか「多様性」というか,これが大学の良いところでもあります。
ちなみに,学生からは,
先生が自分で書いた教科書を買わせてお金稼ぎしてる!!👿
という不満を聞くこともあります。
このあたりの事情については,いずれ別記事でお伝えしようと思います。
2.大学の講義では板書をしないことも多い
高校と大学の授業の方法の違いには,大きく分けて2つのパターンがあります。
順番に見ていきましょう。
2-1.板書をしない
高校までの授業では,「教科書に沿って,先生が板書をして,それをノートに書いていく」というパターンがほとんどですよね。
(最近はデジタル機器を使うことも増えているのかもしれませんが…)
これに対して大学で多いのは,「教員が喋りまくって板書はしない」というパターンです。
これは多いですね。
パワーポイントのスライドを映して,それを使って「教員がひたすら口頭で説明していく」という,学生にとってはなかなか大変な方法です。
このような方法を採る理由は,板書の時間を節約して伝える量を増やすことだと思っていますが,学生にとっては,
ノートが取れない!取り方が分からない!
という悩みを抱える原因にもなったりします。
大学の授業ではあまり板書をしない理由や,ノートの取り方についても,改めて別記事で解説しようと思っています。
2-2.演習や練習の時間を取らないことも多い
高校までは,練習問題を解く時間がたくさん確保されていたはずです。
数学の授業をイメージしてもらうのが分かりやすいかと思いますが,
教科書の解説→例題→練習問題
くらいまで授業中にやっていたのではないでしょうか。
これに対して大学では,教員が口頭で説明して,
確認しといて~。計算できるようにしといてね~。
と丸投げされることも多いでしょう(笑)
これは,演習よりも伝えるべき内容を伝えることを優先しているからですね。
要するに,「復習は自分でできるでしょ」という感じです。
さらに言えば,練習問題を用意してくれればマシなほうで,練習問題を用意してくれない人も普通にいます(笑)
大学の授業は「予習・復習が大前提」というか,「予習・復習をして単位が取れる」という基準になっているので,当たり前と言えば当たり前なのですが,学生にとっては,
授業だけじゃわかんないよ…😞
となってしまうのも分かります。
「大学設置基準」については,別記事で少し解説しようと思いますので,しばらくお待ちください。
3.大学の講義の内容は「正解が分からない」ものもある
高校と大学の授業の内容の違いには,主に2つパターンがあります。
3-1.「正解」や「正しい方法」が分かっていないものもある
高校までの授業では「正しい知識を得る」だったり,「正しい答えを導く」ことが目標です。
最近は「探究の時間」などで,これを変えようという空気をほんの少しは感じないこともないですが,基本は「正解を出せること」が最優先です。
大学では,「そもそも正解がない」とか「人や学派によって答えが全然違う」といったテーマがたくさん出てきます。
教員も,
答えは私も分からないんですけどね~
とか普通に言います(笑)
はぁ?なんて無責任な!
と思うかもしれませんが,そもそもたった1つの正解が分かっていることなんて少ないんです。
そこで「自分で考える力」が大事なんですね。
「大学で身に付けるべき力は何か?」については,別記事で書こうと思います。
ちなみに,高校の社会系の教科書に載っているのは「ある程度合意が取れている内容」だけです。
あくまで「ある程度」,です。
というか,高校の教科書にも「間違ってること」が普通に書いてあったりしますよ(笑)
(たとえば,ちょっと前に話題になったものでは,2022年1月に実施された共通テストの「信用創造」の問題とかですね。興味があったら見てみてください。)
3-2.内容がマニアックすぎることもある
大学の講義の特徴として,「内容がマニアックすぎる」というものもあります。
1年生向けの科目などではそれほどでもないことが多いですし,教員もあまりにもマニアックにならないように気をつけていることが多いです。
それでも,時として,そのマニアックさの「片鱗」が見えたり,「マニアック路線全開」なんてこともあったりします(笑)
これは,そもそも大学が専門的な知識(=マニアックな知識)を得る場所だということ以上に,教員が「研究者」であることが理由です。
大学の教員は基本的に「研究者」ですから,自分の専門分野の「マニア」,「オタク」と言えます。
マニア,オタクが自分のマニア分野について喋るわけですから,,,そうなりますね…(笑)
大学教員の仕事についてはいずれ別記事でお伝えします。
4.長い
ハイ!実にシンプルですね!
大学の授業は長いです!
高校までは50分くらいでしたが,大学では90分がスタンダードです。
大学によっては100分なんてところもあります。
そしてその間,多くの場合は教員が喋りまくります(笑)
長すぎて集中力が持たない!😞
という人も多いかもしれません。
ただ,人間の「慣れ」っていうのは凄いもので,長さには自然になれます(笑)
とはいえ,90分バッチリ集中し続けるというのは無理なので,大事なところでは気合を入れて,そうでないところでは力を抜くことも大事です。
「授業の中で大事なところをどうやって判断したらいいのか」ということについては別記事で解説しようと思います。
5.席が自由
大学の授業では,ほとんどの場合席は自由です。
どこに座っても構いません。
後ろの方に座りたがる学生が多いですね。
個人的には「前に座るのがいい」と思っていますが,その理由については別記事で解説しますので少々お待ちください。
まとめ
高校と大学の授業(講義)の違いについて,5つに分けて解説してきました。
まとめるとこのような⬇感じです。
- 教科書の違い:教科書がない,あるけどあまり使わない,バリエーションが多い
- 授業の方法の違い:板書をせず喋りまくる,練習の時間が少ない
- 講義の内容に違い:正解が分からないものもある,マニアックすぎることも
- 時間の長さ:長い!!
- 席:席は自由
「あるある!!」と思ったものもあれば,「え?そうなの?」と思ったものもあると思います。
大学はバリエーション豊かなので,当てはまらないものが多くてもそれが「普通」です。
ふだんの授業を受ける際の参考になったら嬉しいです。
最後まで読んでいただいてありがとうございましたm(_ _)m